安全衛生情報センター
電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令(昭和63年労働省令第32号)が、昭和63年10月1日公布さ れ、昭和64年4月1日から施行されることとなった。 ついては、下記に示す今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、その運 用に遺憾のないようにされたい。 なお、昭和39年2月19日付け基発第184号「電離放射線障害防止規則の施行について」、昭和39年12月22 日付け基発第1419号「管理区域設定のための放射線測定について」、昭和40年12月23日付け基収第6437号 の2「管理区域に関しての疑義」、昭和47年9月18日付け基発第593号「電離放射線障害防止規則の施行に ついて」、昭和48年3月12日付け基発第121号「電離放射線による障害の防止対策の徹底について」、昭和 49年2月13日付け基発第73号「ハイジャック防止用手荷物検査装置に関する電離放射線障害防止規則の適 用について」、昭和50年8月6日付け基発第463号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行 について」、昭和52年9月22日付け基発第538号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行に ついて」、昭和53年1月26日付け基収第633号「電離放射線障害防止規則第56条の疑義について」及び昭和 56年12月15日付け基発第770号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行について」は、昭 和64年3月31日をもって廃止する。
第1 改正の要点 1 放射能の量、線量当量等に関する単位について、従来用いてきた単位を国際単位系に従った単位に 改正したこと。 2 管理区域に立ち入る労働者について、従来の「放射線業務従事者」、「管理区域随時立入者」及び 「管理区域に一時的に立ち入る労働者」の3区分を廃止し、新たに「放射線業務従事者」及び「管理 区域に一時的に立ち入る労働者」の2区分としたこと。(第4条、第8条関係) 3 放射線業務従事者の被ばく限度については、従来、年齢区分ごとの集積線量の限度及び3月3レムの 被ばく限度により規制していたものを、「実効線量当量」及び「組織線量当量」に係る年限度の方法 を導入することにより、被ばく管理をより適切に行うこととしたこと。(第4条、第5条関係) 4 緊急作業時において、第4条に規定する限度を超えて被ばくすることができる者を従来の「男子」 の放射線業務従事者から、「男子及び妊娠不能である女子の放射線業務従事者に改めた」こと。また、 緊急作業時における被ばく限度を、従来の線量当量の12レムから、実効線量当量の100ミリシーベル ト(10レム)に改正したこと。(第7条関係) 5 管理区域に立ち入る労働者の外部被ばくによる線量当量の測定方法、被ばく線量測定用具の装着部 位等に関する規定を整備するとともに、当該線量当量の算定方法は労働大臣が定める方法によること としたこと。(第8条、第9条関係) 6 管理区域に立ち入る労働者の内部被ばくによる線量当量については、測定の義務の規定を設けると ともに、当該線量当量の測定方法及び算定方法は、労働大臣が定める方法によることとしたこと。 (第8条、第9条関係) 7 健康診断について、最近の医学的知見をもとに当該健康診断の項目の整備を図るとともに、労働者 の受けた線量当量等に応じて、当該健康診断の項目を医師の判断により省略できることとしたこと。 (第56条関係) 第2 細部事項 T 削除 U 削除 V 新設・改正した規定について 1〜6 削除 7 第41条の2関係 (1) 本条は、放射性物質を吸入摂取、経口摂取するおそれのある作業場で労働者が喫煙、飲食する ことに伴い、放射性物質を吸入摂取し又は経口摂取することを防止するために設けたものである こと。 (2) 「放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取するおそれのある作業場」には、第22条で規定する 放射性物質取扱作業室、核原料物質の掘採現場及び原子炉の定期検査時における放射性物質によ り汚染されている作業場等があること。 8〜11 削除 12 その他の改正事項 (1) 第2条、第14条、第17条及び第54条関係 放射能の量について「キュリー」から「ベクレル」に単位の改正を行ったものであること。 (2) 第12条及び第13条関係 照射線量について「レントゲン」から「クーロン毎キログラム」に単位の改正を行ったもので あること。 (3) 第15条、第18条、第37条及び第45条関係 外部放射線による場の線量当量が「1センチメートル線量当量」により評価されることとなっ たことに伴い、「線量率」を「1センチメートル線量当量率」に改めたものであること。 (4) 第3条、第24条、第25条及び第38条関係 空気中の放射性物質の濃度限度は、従来、別表第1に規定されていたところであるが、昭和63 年労働省告示第93号の第1条に規定されたことに伴い、所要の整備を行ったものであること。 (5) 第28条、第29条、第30条、第31条、第32条、第33条、第39条、第41条及び第44条関係 別表第2を別表に改めたことに伴い、所要の整備を行ったものであること。 W 既存の規定関係 1・2 削除 3 第10条関係 (1) 第1項の「放射角」とは、エックス線装置の照射口より放射される利用線錐の立体角をいうこ と。 (2) 第1項の「照射筒」は、照射野の広がりを実質的に制限しうるものであれば足りるものであり、 コリメーター(スリット(スリットカバーを取り付けた場合はこれを含む。)及びピンホール)は、 照射筒とみなして差し支えないものであること。 (3) 第1項の「使用の目的が妨げられる場合」とは、被照射体の形態、特定エックス線装置の使用 場所等の条件のため、照射筒又はしぼりを用いると特定エックス線装置が使用できなくなる場合 をいうこと。したがって、エックス線厚さ計のように一定の微小な放射角の利用線錐のみを放射 し、利用する構造となっている特定エックス線装置については、本条の照射筒又はしぼりを用い る必要はないこと。 4 第11条関係 蛍光分析エックス線装置は、軟線を利用するものであるから、本条ただし書の「作業の性質上軟 線を利用しなければならない場合」に該当するものであること。 5・6 削除 7 第14条関係 本条の掲示事項は、放射線源を交換したとき等に書換えを必要とするものについても、当該機器 の表面、これに取り付けた銘板等に明確に、かつ、容易に消滅しないように表示すること。 8 第15条関係 (1) 第1項の「放射線装置室」は、放射線装置1基につき1室を設ける必要はなく、2基以上を設置す る場合であっても1室を設けることとして差し支えないこと。 (2) 第1項の「20マイクロシーベルト毎時を超えないように遮へいされた構造」とは、利用線錐方 向をも含み放射線装置の外側におけるどの部分においても20マイクロシーベルト毎時を超えない ように遮へいされた構造をいうこと。 (3) 第1項の「著しく、使用の目的を妨げ、若しくは作業の性質上困難である場合」とは、船舶、 屋外構築物等の溶接部の非破壊検査を行うためにエックス線装置を使用する場合、ガンマ線を利 用した液面計を使用する場合等をいうこと。 9 削除 10 第17条関係 (1) 第2項の「自動警報装置」とは、放射線装置が第1号から第3号までの各号の状態にある場合に おいて、これと電気的又は機械的に連動して警報が行われる装置をいうこと。 (2) 第1項で定める周知の方法として、第2項の「自動警報装置」のほかに、手動によるブザー、表 示灯等があること。 (3) 第7項の「インターロック」とは、荷電粒子加速装置が稼働している間や放射性物質が安全な 場所に格納されていない間は、自動的に出入口が閉鎖され内部へ立ち入ることができないように する機構をいうこと。 11 削除 12 第18条の2関係 (1) 「労働者が立ち入らない方向に照射」とは、放射線を照射する方向に労働者を立ち入らせては ならないことをいうこと。なお、本条は、放射線を有効に遮へいする建築物等がある場合に、当 該建築物等の後方で放射線が遮へいされている部分に労働者を立ち入らせることを棄止したもの ではないこと。 (2) 「しゃへいする措置」については、特定エックス線装置等を使用して行う作業の内容、遮へい 物の遮へい能力等を勘案して講ずべきものであるが、事業者において標準的な遮へい方法を定め、 これによることが望ましいこと。 13 第18条の3関係 (1) 本条は、放射線源を伝送管の先端から外に送り出すことを認める趣旨ではないこと。 (2) 第1項の「透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するとき」とは、当該装置を使用して透過 写真を撮影するときをいい、放射線源の入替えのために当該装置の線源容器から放射線源を取り 出すときは含まれないこと。なお、放射線源の入替えの作業は、労働者の被ばくを防止するため、 遠隔操作により行うべきことは当然であること。 (3) 放射線源の送出し装置を有する透過写真撮影用ガンマ線照射装置の構造は、次の図のとおりで あること。

14 第18条の4関係 (1) 第2号の「コリメーター」とは、伝送管の先端に取り付けて使用する器具で、放射線源送出し 装置により線源容器から取り出された放射線源をその内部に収納することにより、利用線錐の大 きさを制限し、及び利用線錐以外のガンマ線の照射線量率を減少させるものをいい、その機能は、 特定エックス線装置に取り付けて使用する照射筒又はしぼりと同様であること。 コリメーターは、通常、鉛等を材料としており、次の図のようなものがあること。

(2) 第2号の「コリメーター等」の「等」には、鉛等の遮へいブロックが含まれること。 15 第18条の5関係 (1) 本条の自主検査は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置について外観検査、作動試験等により行 えば足りるものであり、線源容器を分解することまでを必要とするものではないこと。 (2) 本条の自主検査は、労働者の被ばくをできるだけ避けるため、第1項第4号に掲げる事項につい ては放射線源を取り出すことなく行い、その他の事項については必要に応じ適切な遮へい等の措 置を講じて行うこと。 (3) 自動警報装置等を有する透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、本条の自主検査を行う 際に、併せて当該自動警報装置等の異常の有無の点検を行うことが望ましいこと。 16 第18条の7関係 (1) 第2号の「検査の方法」には、自主検査に用いた放射線測定器の種類及び型式も記載すること。 (2) 本条による記録は、個々の透過写真撮影用ガンマ線装置ごとに作成し、当該装置の種類及び型 式、管理責任者の氏名、放射線源の交換年月日、第18条の8の規定により行われた点検の結果、 第18条の9の補修その他の措置も併せて記載することが望ましいこと。 17 第18条の8関係 自動警報装置を有する透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、本条の点検を行う際に、併 せて当該自動警報装置の異常の有無の点検を行うことが望ましいこと。 18 第18条の10関係 (1) 「放射線源を線源容器その他の容器に収納する作業」は、できるだけ短い時間で行うべきもの であること。このため、事業者は当該作業に必要な訓練を労働者に対して行うことが望ましいこ と。 (2) 「鉗子等」は、放射線源の形状、放射線の強さ等に応じたものを用いるようにすること。 19 第22条関係 (1) 第2項かっこ内の規定は、放射性物質を取り扱う二以上の室が並んでいたり、向かいあったり しており、それらの間が放射線業務従事者専用の廊下によって連絡されている場合には、これら 二以上の室及び廊下を合わせて一の放射性物質取扱作業室とする趣旨であること。 (2) 放射性物質を処理するセル等が設けられている室(セル操作室等)は、放射性物質取扱作業室に 該当するものであること。 20 第23条関係 (1) 一般に、鉛、ステンレス、合成樹脂等は第1号の規定に適合するものであるが、木材、しっく い、むきだしのコンクリートモルタル等は適合しないものであること。 (2) 水のたまるような部分やタイルの目地の不良な部分のあるものは第3号の規定に適合しないも のであること。 21 削除 22 第26条関係 ただし書の「その設備を設けることが作業の性質上著しく困難な場合」には、第22条第1項ただ し書に規定する場合、金属ウランの圧延の場合等があること。 23 第27条関係 (1) 第1項の「その旨を表示」とは、必ずしも用途を明記しなくても、特定のマークをつけること で差し支えないこと。 (2) 第2項の「汚染を容易に除去することができる構造及び材料」については、第23条の規定に準 ずるものであること。 24 削除 25 第29条関係 第2項の「じんあいの飛散しない方法」とは、湿らせた布によるふき取り等をいうものであること。 26 第30条関係 第1項の「その限度以下になるまで」とは、積極的に汚染を除去することのほか、一定期間保管 し放射能の減衰を待つことを含むものであること。 27 第31条関係 (1) 第1項の「出口に汚染検査場所を設け」とは、放射性物質取扱作業室の内側であって出口に近 いところに汚染検査場所を設けることであること。 (2) 第2項第1号の「洗身等」によってもなお、別表に掲げる限度の10分の1以下にすることができ ない場合には、第44条第4号の規定により医師の診察を受けさせなければならないので、医師に よる診察を受けさせるため当該労働者を放射性物質取扱作業室から退去させて差し支えないこと。 28 第33条関係 第1項の「貯蔵施設」には、貯蔵室の他、壁にはめこまれた貯蔵庫等があること。 29 第34条関係 本条は、放射性物質取扱作業室からの排気又は排液であっても、放射性物質により汚染されない ものの排出系統に関する構造についてまで規制するものではないこと。 30 第36条関係 第1項の「保管廃棄」とは、廃棄の目的をもって一定の場所に保管することをいうこと。 31 第37条関係 (1) 第1項ただし書の「容器に入れることが著しく困難なもの」には、大型の機械設備等があるこ と。 (2) 第1項ただし書の「汚染のひろがりを防止するための有効な措置」には、ビニールシートによ るこん包等の措置があること。 32 第38条関係 第1項の「汚染の程度に応じて」とは、粉じんの場合には防じんマスクを、有毒ガス又は蒸気の 場合にはその種類に応じて防毒マスクを、さらにこれら放射性物質による汚染の程度が高い場合に はホースマスク又は酸素呼吸器をというように、適切に使い分けることをいうこと。 33 第39条関係 第1項の「保護衣類」には、帽子、フード等が含まれること。 34 第39条第1項の規定により労働者には汚染防止用の保護衣類を使用させる場合には、それぞれ本 条の「作業衣」とみなして差し支えないこと。 35 第42条関係 事故が発生した場合、退避に先立ってグローブボックスの扉を閉ざすこと、倒れた容器を起こす こと等の措置を迅速に行うことが事故発生時の影響の拡大を防ぐために役立つものであり、本条は そのような応急の措置を退避の前にとらせることを禁止するものではないこと。しかしながら、こ のような措置を行う場合には、これを行う労働者が多量の放射線を受けるおそれがあるので日常こ のような事故における応急措置及び退避について労働者を教育・訓練しておくことが必要であるこ と。ただし、事業者がこのような応急の措置を労働者に強制的に義務づけることは適当でないこと。 36〜40 削除 41 第59条関係 (1) 「障害が生じており」、「その疑いがあり」及び「障害が生ずるおそれがある」の判断は、健 康診断を行った医師が行うものであること。 (2) 「その疑いがあり」とは、現在異常所見が認められるが、それが放射線業務に従事した結果生 じたものであるかどうか判断することが困難な場合等をいうこと。 (3) 「障害が生ずるおそれがある」とは、現在異常所見は認められないが、その労働者が受けた線 量当量から考えて障害が生ずる可能性があるとか、現在の健康状態から考えて、新たに又は今後、 引き続き放射線業務に従事することによって障害が生ずる可能性がある等の場合をいうこと。 42 第60条関係 「必要のつど容易に測定器を利用できるように措置」には、その事業場に地理的に近い所に備え られている測定器を必要のつど借用しうるように契約を行うこと等があること。 43 第61条の2関係 (1) 本条の届出は、専ら移動して使用する透過写真撮影用ガンマ線照射装置を用いて、いわゆる出 張作業を行う場合に行うものであり、放射線装置を設置し、又は移転する場合に第61条の規定に より行う届出とは異なるものであること。 (2) 本条の届出は、自己の事業場以外の場所で作業を行う場合に、当該作業場ごとに行うべきもの であるが、一連の作業で場所的に近接した数ケ所の作業場所で作業を行うことが予定されている 場合には、あらかじめそれらの作業場について一括して届出をして差し支えないこと。 44 第62条関係 「放射線業務を行う事業場内において放射線業務以外の業務を行う事業」とは、放射線業務を行 う事業場内において、建設、塗装、配管、配線、清掃等の業務を行う下請業者等の事業をいうこと。 第3 その他(労働安全衛生法施行令の規定について) 1 別表第2第5号関係 「放射性物質の取扱い」とは、放射性物質の使用だけでなく、その運送、保管等の業務をも含むこ と。 2 別表第2第6号関係 「原子炉の運転」とは、原子炉の操作取扱い、研究及び利用のために管理区域に立ち入って行う業 務をいうこと。